こんにちは、Happycat (@Happycat3meow) です。
ベストセラー中のデビッド・A・シンクレア博士の「ライフスパン 老いなき世界」。
先日この本の感想を書いたのですが、かんたんな印象に留めて内容自体に触れませんでした。
とてもボリュームがある本ですが、
理解がまとまってきた部分を第一弾としてアウトプットをしてみます。
まずは出発点である老化のメカニズムに挑むところをまとめたので、
本をこれから読む方も読んで難しいと思った方も参考にしてみてください。
もくじ
「老化」とは「治せる病気」だった!?
著者がここで伝えているのは、ズバリ、老化は病気であるという見方です。
そして病気である以上は治す方法があると説いているのです。
これは今までに人がそのまま疑うことなく受け入れていた
「老化」という現象自体を疑い、そこにメスを入れていく画期的な視点です。
世界中の博士が、細胞の再生に挑戦し続けてきた
「老化現象」とは、言い換えると細胞の衰えということが言えます。
「ライフスパン 老いなき世界」の中では、
老化として現れる主な現象のいくつかをあげています。
ただそれはわたし達が一般的に老化現象として思い浮かべるように
「シワが増える」とか「骨が弱くなる」とか、そういったこととしては書かれていません。
この本ではいくつかの「老化現象」を、いずれも一般的にはあまり認識しないような
生物学的な見方から表現しているのです。
たとえば、
・テロメアが短くなる
・幹細胞が使い果たされる
と言った内容を老化現象として挙げているのですが、一般的にはちょっとちんぷんかんぷんですよね(^_^;)
それでも何人もの研究者たちの飽くなき探求によって、
今までには考えられなかった治療法が仮説として立てられ、次にその実践が行われ、
その結果として中には実現にまで至り、人類の希望を大きく広げつつある画期的な事実までもが起きています。
その代表例が、例えば幹細胞です。
幹細胞というのは、未分化の細胞。
大雑把に言うと「これから(皮膚や髪など)何になっていくか、
まだ決まっていない状態の細胞」です。
2012年、日本の山中伸弥教授が、ノーベル生理学・医学賞をジョン・ガードン教授と共に受賞しました。
わたしの簡単な理解なので、さらに正確な事は詳しい資料をおすすめしますが、
山中教授はその「これから何にでもなれる(未分化)幹細胞」を
生み出すのに必要な要素を発見した、と理解して良いと思います。
その結果、人工的に生成することが可能になった幹細胞が、iPS細胞です。
2019年には、世界で初めて視力をほとんど失くした患者さんに
iPS細胞をもとにして出来た角膜の移植が成功し、
その患者さんが光を感じ取れるようにまでなるという、
新時代を告げるような非常に明るいニュースがありました。
近年は全面的にテクノロジーの発達がめざましく、
コンピューターの性能や医療現場で使用する道具についても、
すごい勢いで進化してきています。
さらにまた、先人となる方々が積み上げてきた膨大な実験結果や知識と合わせ、
あらゆる実験や検証についても飛躍的にすばやく行えるようになってきました。
今後もその傾向はどんどん高まっていくことでしょう。
シンクレア博士が考える老化の原因とは
ところで先ほどいくつかの「老化現象」の例を挙げましたね。
シンクレア博士は研究の中で、それら老化現象の全てのもととなる
ひとつの原因が更に上流にあるという仮説を立てました。
その仮説として、シンクレア博士が立てた老化の原因とは、
老化現象は「情報の喪失である」ということです。
「情報の喪失ってどういうことだろう?」と思いますよね。
まずは簡単に、人間(を含む生体)内には、二種類の情報がある
ということを押さえておきましょう。
先ほど出した幹細胞の話しと後でつながってくるので、面白いと思います(^^)
人間が持っている情報は、デジタルとアナログに分かれる
ヒトを含めた生体が持つ二種類の情報とは、
「デジタル情報」と「アナログ情報」のふたつです。
でもデジタル情報とアナログ情報の中身ってなに?と考えてしまうことと思います。
生体におけるデジタル情報とアナログ情報とは、
「ライフスパン 老いなき世界」によると、おおよそ以下の様に定義されています。
アナログ情報=エピゲノム(DNAが関わっていない遺伝情報)。色々な出来事に対して臨機応変に対処する。
老化のメカニズムを考える
この世界には目に見えなくても、
生体細胞に損傷を与えるたくさんの病原菌や化学物質、
電波などといったストレス物質が限りなく存在しています。
それらは一人一人を決定づけるDNAにとっても脅威となります。
身体に例えれば、ケガをしたり傷や炎症を起こした時のように、
正常さからは外れた状態と言えるでしょう。
遺伝情報の神秘的なはたらき
DNAは生体細胞の中に存在しており、
細胞を複製していくときの情報をその中に含んでいます。
DNAが傷を受けているとき、その傷ついた情報を含んだままの状態の細胞を複製し、
増やし続けていくのは望ましくないことだ、というのはなんとなく納得できますよね?
もし傷ついた(正常でない)細胞を複製し続けると、それは異常細胞を増やすことにつながり、病気になってしまいます。
しかし生体細胞システムは賢くて、そんな時はDNAの損傷が完治するまで、細胞の分裂(つまり増殖)をストップする機能があるといいます。
このストップするかゴーサインを出すかの判断を時と場合に応じて行ってくれるのが、
アナログの遺伝情報である、エピゲノムであるというのです。
そして単純に複製される側の情報が、
その人自身を表すデジタル遺伝情報の塊でありそれがゲノムである、
というふうに考えてもらうとなるほど!と思えるのではないでしょうか。
そして生体細胞はもちろん、その個体自身を守る為に働きます。
だからエピゲノムは、傷ついたDNA情報のコピーをストップする判断にくわえて、
傷を治すために異常を起こしているDNAのある場所へ、
駆けつけ救助隊を派遣する判断までも身につけていったというのです。
この上なく素晴らしい、生命の深い働きを感じますよね!
老化はどのようにして起こっていく?
しかしここで大問題があるのです。
この世界はどこにでも有害なストレス因子があふれ、
わたし達の細胞はしじゅう、それらストレス因子のアタックを大なり小なり受けていることをさきほどもお話ししました。
そうすると何が起こって来るか?
ヒトの成人は、およそ60兆個の細胞から成り立っていると言われています。
しかし、世界中のあらゆるストレス因子が、星の数ほどある細胞のどこかに、
いつも何かしらの攻撃を与えているということになります。
すると体中のあちこちの細胞で次々に損傷や異常が起き続け、
いつもどこかの細胞から「治しに来て欲しい!」という緊急コールがかかり続けているような事態になってしまいます。
緊急コールが増えすぎると、駆けつけ警備隊が頑張っても追いつかなくなったり
ついには、出かけたまま元の場所へなかなか戻ってこれなくなってしまいます。
ここで、先ほどのiPS細胞で触れた「幹細胞」をちょっと思い出してください。
幹細胞とは、「未分化」=つまりこれから何にでもなれる状態の細胞ということでしたよね?
そして、「エピゲノム」とは、
順境や逆境に応じてその場その場にあった指示をしてくれる、アナログの遺伝情報でした。
エピゲノムは、まだ何になるかが決まっていない細胞に
「爪の細胞が必要になったので、あなたは爪になって増殖してください」
「あなたは目の中の細胞として古い細胞と入れ替わってください」
と、指示をしていきます。
何になるかを決める、または行き先のゴールを決めてそこへ行ってくださいというようなものです。
エピゲノムの指示情報にミスが増えてくる
このエピゲノムの指示がもし追いつかなくなると、どうなるでしょう。
幹細胞が正しい指示を受けられなくなり、混乱していってしまいます。
簡単にいうと、胃の粘膜として増えればいいのか、目の水晶体になればいいのか、それともじっとしておけばいいのかわからなくなってしまうといった所でしょうか。
そうなると正しい分裂、正しい増殖ができない細胞が出てきたり、
修復が追いつかず、駆けつけ警備隊が来るまで傷ついたままで待たされる状態の細胞が出てきてしまいます。
いわば、これがあらゆる不調や病気のもととなる「老化現象」だということです。
つまり、正常な、正しい情報が失われるということです。
老化をこのような現象として理解した上で、
「ライフスパン 老いなき世界」では、どう取り組むことで老化現象に立ち向かっていくのかが描かれていくのです。
シンクレア博士はこのことについて、
「飛行機が飛ぶまでは、誰もが人間が空を飛ぶなんて不可能だと思っていた。
今もまたそのときと同じだ」
としています。
まったく同感なのですが、
これがあるから人類は未来に向かって限りなく可能性を求めていくのですよね。
次回は、その老化現象の克服にはどのように取り組むかについてまとめていきたいと思います。